団扇と書いてうちわと読むのはなぜ?由来・歴史や扇子との違いを解説!

2024/2/16

カテゴリー:うちわな雑学

団扇の由来

日本人にとって生活の道具としてなじみの深いうちわ。
平仮名で「うちわ」書かれることが多いですが、漢字では「団扇」と書きます。
なぜ団扇と書いてうちわと読むのか、不思議に思いますよね。

その疑問を解消すべく、本記事ではうちわの語源や歴史、うちわの作りや種類、似た道具である扇子との違い、「日本三大うちわ」について解説します!

うちわの由来と漢字

「うちわ」の語源は、「打つ翳(うつは)」だといわれています。
虫や病気などの害を打ち払うという意味の動詞「打つ」と、そのための道具「翳(は)」を組み合わせた言葉です。
やがて「打つ羽」と書かれるようになり、発音は「うちわ」に変わったとされています。

漢字では、最初は「打羽」と書かれていましたが、平安の頃から「団扇」に置き換わったようです。
団扇は中国の言葉で、丸を意味する「団」と扉の開閉により風が起こることを意味する「扇」を組み合わせたもの、つまり風を起こす丸い道具のこと。
日本語の「うちわ」に対し、中国語の「団扇」が当て字として使われるようになり、現在にいたります。

打つ翳からうちわへの変遷

というわけで、「団扇」と書いて「うちわ」。
漢字表記はあまり見かけなくなりましたが、覚えておきたいですね。

団扇(うちわ)歴史

うちわはどこで生まれたもので、いつ頃から日本で使われるようになったのでしょう。
ここからはうちわの歴史について簡単に解説します。

うちわの起源は中国の「翳」

うちわは、紀元前3世紀の中国(周の時代)で誕生した「翳(さしば)」が原型だとされています。
翳はうちわの柄を長くしたような形で、扇面の部分には鳥の羽や絹が張られていたようです。
身分の高い人の顔を隠したり日光を遮ったりするための道具で、いわば権威の象徴でした。

翳

日本のうちわの歴史

日本のうちわには、以下のような歴史があります。

■弥生~古墳時代
中国で生まれた翳は3~4世紀頃、日本にも伝わったとされています。
当時の出土品や壁画から、木製の翳が行事などに使われていたようです。
古墳を飾るさまざまな埴輪の中から、翳型の埴輪が見つかっています。
国立歴史民俗博物館HPで画像を確認できます。

■飛鳥~奈良~平安時代
宮廷で天皇や貴族など身分の高い人たちが涼を取る時や、顔を隠す時に使われました。
大型のものや美しいもの、飾るためのものも作られました。
万葉集にもうちわのことが詠まれています。

平安時代には現在のうちわに近い形となり、次第に庶民の間でも軽くて実用的なうちわが広まっていきます。
また、「うつは」から「うちわ」へと呼び名が変化してき、団扇という漢字が当てられるようになりました。

■室町~戦国時代
室町時代の終わりごろには、現在のうちわと同じような骨と紙の構造のもの作られ始めました。
戦国時代になると、戦場で使われる「軍配団扇(ぐんばいうちわ)」が誕生します。
軍配団扇は軍を象徴し、合戦の際に大将が軍の指揮をとるための武具として使用されました。

軍配団扇

円形、瓢箪(ひょうたん)形、楕円形などの形があり、扇部には木や牛革、柄には鉄が使われることが多かったようです。
この軍配団扇の名残りが、現在も相撲で行司が使う軍配です。

■江戸時代
江戸時代には、竹と和紙を使った軽くて送風量の多い実用的なうちわが生産され、庶民の間で爆発的に普及します。
涼を取ったり、料理や風呂の火を起こしたり、日常生活に欠かせないものになりました。

また、木版技術の進歩により、浮世絵や役者絵を印刷したうちわの大量生産が可能に。
絵柄が多彩になり、見たり飾ったりして楽しむものとして流行しました。

■近代~現代
人々の生活にすっかり浸透したうちわは、明治時代には広告媒体としても使われ始めます。
会社や寺社が、扇面に広告を入れて配布し始めたのです。

現在もうちわは販促グッズの定番であり、特に夏の屋外イベントやキャンペーンなどで盛んに配布されていますね。
「応援」にもうちわが使われるようになり、スポーツ観戦やアイドルなどのコンサートでもうちわがマストアイテムとなっています。

販促用うちわ

うちわの基礎知識

続いては、意外と知らないうちわの基本知識について簡単に解説します。

■うちわの作り
一般的な竹うちわの作りと各部の名称は以下のとおりです。

うちわの作りと各部の名称

■うちわの柄
竹団扇には、柄の形によって平柄、丸柄、差柄の3種類があります。

・平柄:竹を6~9分の幅に割って先端部分を削ったもの
・丸柄:竹の丸い形状をそのまま使ったもの
・差柄:扇部(骨)と柄を別々に作り、後から扇部に柄を差し込んだもの

平柄と丸柄と差柄

■うちわの素材
従来、うちわは職人が竹と和紙で手づくりする日本の伝統工芸品でした。
しかし、最近では販促用などの大量生産に適した安価なプラスチック製(ポリうちわ)や紙製のうちわもが増えています。

■うちわの価格
100円のものから専門店の数千円のもの、高価な伝統工芸品まで価格には幅があります。
イベントやキャンペーンの販促品を無料でもらう機会も多いので、「そういえばうちわを買ったことない…」という方も多いかもしれませんね。

団扇(うちわ)と扇子(せんす)の違い

同じ“扇ぐ”道具で、字だけ見ると混同しがちなのが扇子です。
扇子は細い竹または木の骨を根本の「要」で固定し、間に和紙や布を張ったもの。
扇子も古くから涼を取る道具として使われていました。
うちわとの大きな違いは、「折りたためる」「起こせる風量は少なめ」という点です。

扇子

【団扇と扇子の違い】

団扇扇子
主に丸型/柄がある扇型/柄がない
素材竹/和紙竹・木/和紙・布
構造折りたためない折りたためる
風量多い少ない
用途 涼を取る
火を起こす
料理を冷ます
お祭
スポーツ・コンサートの応援
広告をつけた販促品
涼を取る
茶道・華道などの儀式
能や落語など芸能の小道具
贈答品
海外の方へのお土産

扇子は江戸時代から和服に合わせる小物として、また茶道などの儀式や落語・能楽・演舞などの小道具としても用いられています。
現在では、外国人観光客向けのお土産としても人気です。

日本三大うちわとは?

実はうちわにも有名な産地・ブランドが存在することをご存知でしょうか。
ここでは日本の三大うちわ、「房州うちわ」「京うちわ」「丸亀うちわ」についてご紹介します。

■房州うちわ
生産地は千葉県南部の館山市や南房総市周辺です。
女竹の丸みを活かした「丸柄」とごく細い竹を糸で編んだ美しい「窓」が特徴で、明治10年頃から生産がスタート。
関東大震災でうちわ問屋が館山市船形に移住したのをきっかけに生産が急拡大し、日本屈指の生産地として知られるようになりました。

参考サイト:南房総市HP

■京うちわ
生産地は京都の深草で、「都うちわ」とも呼ばれます。
細骨を放射状に並べた団扇面と柄を別々に作り、後から差し込む「挿し柄」の構造が特徴です。
竹ひごが50~100本も使われ、多いほど高級とされます。
扇面には人物・風景・植物・季節の風物詩などをモチーフに繊細で優美な絵画が描かれ、装飾品や美術工芸品として高い評価を得ています。

参考サイト:京都扇子団扇商工協同組合HP

■丸亀うちわ
生産地は香川県丸亀市です。
1600年頃から生産が始まり、江戸時代に金刀比羅宮の参拝土産として人気とって全国に広がりました。
骨と柄が一本の竹から作られているものが多く、47もの工程を経て完成します。
柄は平柄と丸い丸柄の二種類があり、扇面の形状や色柄も多彩です。
年間1億本以上生産され、日本国内のシェアは9割にも上ります。

ご紹介した三大うちわはいずれも経済産業大臣指定の「伝統的工芸品」に指定されています。
飾って楽しんだり、お土産や贈りものにしたりするにもピッタリですね。

参考サイト:香川県うちわ協同組合連合会HP

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